長野県安曇野で行われた「第2回あづみ野ギターアカデミー」(通称:AGA)に行ってきました、僕はスタッフと演奏、そしてオプションレッスンと朝練コーナーの担当。
今回も非常に内容が濃く色々な刺激や経験を得ましたが、特に最終日前夜に行われた受講生代表コンサートの選考会では僕も審査員を任され、初めて人を審査するという立場を経験しました。
とりあえず自分が素晴らしいと思った演奏に票を入れていけば良いかな、と思って臨んだ審査員、しかし始まってみると‥テクニックが安定している演奏はそれでよいのですが、ミスはあっても自分の表現したいものが伝わってくる演奏、人によっては講習会中の練習していた姿まで思い出され「そういえば、この曲を一生懸命練習してたっけ‥」と、一人一人聴いているうちに色々な事を考えてしまい、だんだん自分の審査基準が定まらなくなってしまうのです、「審査は難しい‥」と痛感しました。ちなみに審査結果で選ばれた5名は、翌日のコンサートで素晴らしい演奏を聴かせてくれました。
そして、このAGAでメイン企画になりつつある全員参加のアンサンブル、今回の曲は講師でお招きしたギタリストの松岡滋先生の、この日のために作曲されたという「やわらかな歌」、とても良い曲です。これを3日間で仕上げ、最終日にはコンサートで初演するという、とてもハードなスケジュールでしたが、作曲家が直々に指導し、さらに指揮までしてくれるのですから贅沢です。
そしてこの指揮というもの、今回僕はこれを少し体験することが出来ました。それは2日目の朝、僕も担当していた朝練コーナーでの事。朝練は朝7時から8時くらいまで自由参加で行われますが、毎晩遅くまで飲んでいる方もいるので日に日に参加者が減っていきます‥。その2日目の朝はついに6人になってしまい、前半は基礎練習、後半はアンサンブルの練習をする事になりました。
アンサンブル練習の時には松岡先生が指揮を振ってくるのですが、さすがに朝練でお願いする訳にもいかず、「じゃあ、僕が最初だけでも」と振る事になり、「イチ、ニー、サン」と演奏を始めました。
そんな僕も前の日寝たのは4時過ぎ‥、3時間ほどの睡眠で朝練担当の任務を果たすべく、しかし半ばボ~としながら指揮を振っていると、何だか演奏のテンポが不安定になってくるのです。「やっぱ、みんなも夜更かしし過ぎなのかな‥」なんて思ったのは大間違いで、皆は僕の指揮にしっかり合わせてくれいたのでした。曲が始まってしまえば自分の指揮なんて見ない、と勝手に思いこんでいた僕は一気に目が覚め、それまでしてきた練習内容に沿うよう、一生懸命指揮を振らせてもらいました。
それまで僕は指揮を振った事が無く、指揮者というものがよく分からなかったけど、自分の手の振り1つでテンポが変わったり、曲の間が出来たり、実際に自分で体験すると指揮を振るという事が非常に面白いと感じたのです。
さらに、この話には続きがあります。面白いと感じた僕は、是非他の人にも体感して欲しく思い、朝練に参加していた受講生の女性に指揮を振ってもらいました。もちろん、その人も初めての経験だったと思いますが、ナント指揮をしながら歌っていたのです、というか、歌いながら指揮をしていたのです。確認はしていませんが、もしその人がギターの時は心の中で「イチ、ニ、サン」と数えながら演奏していて、指揮の時は歌いながら演奏していたとすると、その変化はとても興味深く感じるのです。曲が終わってから「どうして歌いながらだったんですか?」って聞くと、「その方が演奏しやすいから」との事、別に誰のアドバイスでもなく、自然にその方法を選んでいた様です。
それは音楽をする時の基本的な姿勢でした。
さて、そうして練習してきたアンサンブル曲「やわらかな歌」、本番は感動的でした。何故だか分かりませんが、演奏終了時に松岡先生がみんなに向かって「ありがとう」と言った時、僕は目頭が熱くなるのを感じました。それはきっと、僕だけでは無かったと思います‥。
今回僕は確信を持てた事があります。人が感動できる必要最低限の条件、それは真剣である事。そういう環境が「あづみ野ギターアカデミー」にはあります、そしてそれを支えてくれる講師陣、スタッフもいます。
最後に、こういう場をゼロから作り上げ、僕らに与えてくださっている主催者の富川勝智先生には、改めて心よりお礼申し上げます。
是非また来年、「あづみ野ギターアカデミー」で会いましょう!
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